[遊戯王//海馬×静香]
『それじゃ、また』
と言って切れた携帯電話を見つめて、彼はまたしても自分から切れなかった通話に憮然とした。
本来ならば用件だけ伝えて、相手の確認を取ったらはいさようなら。
かかってきた電話であれば相手の用を聞いて返事をしてではさようなら。
時は金なりを金科玉条とする海馬コーポレーションの総帥はたとえアメリカ大統領からのクレームでも10分で終わらせるという噂がまことしやかに囁かれる、電話応対の達人である。
なのに彼女との会話はなぜ、たいした用もないのにこうも延々と長引き、挙句の果てに終止符を打つのが自分ではなく相手の方なのか。
こんな電話に意味などないのに。
そう思って毎回毎回、かかってきた電話に出るのに2分は迷うというのに。
その2分を、切らずに待ち続ける彼女を思うと、つい電話に出てしまう自分はそうとう重症だと思った。
自分が彼女に対して他者ほど強気に出られない理由に、彼はそろそろ気づいている。
例えば久しぶりに聞いた弾むような声に、安堵してしまうくらいに。
そしてそのほんのささやかな安心を得るがためだけに。
彼はその電話を着信拒否できないでいる。