人は生きていく中で必ず過ちを起こす。
それが不意の出来事であろうがなかろうが、起きた事をなくすことはできない。
その事実は定められたものなのだから。
しかし、過ちをなくす事はできないが、許す事はできる。
過ちが許される条件。
それは故意の犯行ではない事、予測できなかった出来事である事、大いに反省している事。
今回のレイオット・スタインバーグの場合、この三つの条件の中の、反省以外の二つに当てはまると思われる。

本日午後12時17分。トリスタン市の住宅街でケースSAが発生。しかし、すぐさま辺りを封鎖、そして丁度昼食時の、しかも道路のど真ん中というのも幸いし、人通りが少なく犠牲者はまだでていない。
魔法士の出動要請により、正規の魔法士が出動するはずだったのだが、連日の魔法士の投入により、正規の魔法士が不在、または強制待機期間という状態であった。
そうなると、当然レイオットに依頼がくる。レイオットは出動要請により、魔族鎮圧へと向かったのだった。
丁度昼食時なのもあり、あまり人通りが無かったせいかレイオットが到着した頃には犠牲者もなく、
魔族の階級も<男爵(バロネージ)級>であった。だから、レイオットも油断していたと言われればそれまでだが、牽制のために撃ったレイオットの銃弾が、魔族の<魔力圏(ドメイン)>により、進行方向を変えられ、近くに停車していた火気燃料を積んだトラックへと命中。大爆発を起こしたのだった。
所変わり魔法管理局地下の喫茶室。そこにはいがみ合う男女の姿があった。
正確には、女性の方が一方的に男性を問い詰めているように見えるのだが。
監督官の制服姿の女性に、ダルそうに丸めがねを鼻に引っ掛けた男性。そして、フードを被った少女。
そう、それは言うまでもなくネリンと、レイオットにカペルテータだ。
「全く、今回のこの事件。奇跡的に犠牲者もなく、魔族もあの爆発で運良く死んだから良かったですけど、あれがもし街中だったらどうするつもりだったんですか!!」
椅子に座る事無く、身を乗り出して言うネリン。はたから見ていたら、きっと彼女の頭からは湯気が出ていただろう。
しかし、そんなネリンに怖気づく事もなく、落ち気味の眼鏡をかけ直すレイオット。
「あ~シモンズ監督官。さっきから何度も言うが、あれはわざとやったわけではなくて、魔族がやった事だ。俺だって、魔族があんな事するって予測できたなら、銃なんか使わなかったさ。」
つまり、予期せぬ出来事だったんだとレイオットはいいたいらしい。
それもそうだ、魔族は、銃の進路を変更、つまり避けることはあまりしない。魔族にとって銃弾は、自らの脅威にはならないからだ。大体は、消失させるか<魔力圏(ドメイン)>で進行を停止させるだろう。
その考えが定着しているため、魔族がわざわざ銃弾の進路を変えて避けるとは考えない。ましてや、その進路を予測できる者などいないだろう。むしろ、この爆発による犠牲者がいない事を喜ぶべきではないだろうか。
しかし、ネリンはそう甘くはなかった。
「予測できなかったのはわかります。でもスタインバーグさんがトラックの存在に気づいていたら、可能性を考えて銃は使わなかったでしょう!? もっと、周りの状況もきちんと把握していただかないと困ります!」
なおも鼻息をあらくしてレイオットにつめよるネリン。
「あ~はいはい。悪かった悪かった。」
もはや、説得も言い訳も無駄と判断したレイオットは、話を右から左モードへと突入した。
この様子から、反省のハの字もないことが良くわかる。
「それでなくても、今月同僚が寿退社するから、人手が足りなくなるというのに…しかも、上司には書類明日まで、なんて非道な言葉を受けるし。スタインバーグさんが何かトラブルを起こすと、書類が膨大な量になるんですよ!!」
魔族を倒してもらっておいて酷い言い草だが、レイオットはもうすでに慣れているので意に介した様子は全く無い。
それ所か、話を聞いているのかどうかも怪しいものだ。
それから、どれほど時間がたったのか分からないが、ネリンはすでに文句か、世間話かわからない話へと方向を変えていた。
しかし、ずっと右から左に話しを流していたレイオットの耳に、ネリンの言葉が不意に届き、レイオットは思わず顔を上げた。
「どうやら、妊娠したみたいなんです。」
言葉の意味が理解できずに、ティーカップに伸ばそうとしていた腕が思わず止まる。
「は?………」
しばし沈黙。そして、やっと言葉の意味を察する。
「ちょ、ちょっと待て。少なくとも俺はまだ、手はだしていないぞ…。」
少々慌てながら言うレイオット。一体何に慌てているのかは謎だが。
「は?何言ってるんですか、スタインバーグさん。今月結婚する同僚の話ですよ。あーさては、私の話聞いてませんでしたね!」
しまった!思わずそんな顔をするレイオット。自分で自分の首を絞める発言をしてしまった。
再びネリンの小言が始めるかと思いきや、
「まあ、いいでけどね。今に始まった事じゃないですから。」
どうやら、ネリンはレイオットの不意にでた問題発言は気にしていないようだ。
それより、話を聞いていなかった事のほうが、ショックだったのだろう。少々寂しそうな声音。
何故かチクリとレイオットの胸が痛む。
「あーその、すまん。」
バツが悪そうにレイオットが頬を掻く。しかし、先程とは態度が一変。
当のネリンはすでに、ケロッとした表情をしていた。
「あ、そうだ。それよりさっきの言葉の意味は何だったんですか?」
ふと思い出したかのように、ネリンがレイオットに投げかける。さっきの言葉。
それは「まだ手はだして…」の事のようだ。
その質問に、思わずレイオットは頭を抱える。なんせ、不意にでた言葉なので、余計に弁解しにくい。そのネリンの問いかけに、今まで静かにお茶を飲みながら、適当にネリンに相づちを打っていたカペルが突然口を開いた。
「それは、つまりレイオットがシモンズ監督官と、まだ肉体関…」
そこでワシっとレイオットがカペルの口を塞ぐ。カペルはフガフガと続きを喋っているようだったが、レイオットの手に阻まれて、それを達成する事はできなかった。
「まあ、気にするな。大した意味じゃないから。」
空笑いを浮かべながら話しを流すレイオット。もちろん、まだ手はカペルの口を塞いだままだったが。
「はあ、そうですか。」
普通の女性なら、ここまで言わなくても、レイオットの言葉の意味に気づきそうなものだが、さすがネリン。鈍感さでは世界NO.1ではないだろうか。レイオットにとって良かったような、悪かったような。
そんな、はたから見ればしょうも無い会話を続けていた三人に、喫茶室の入り口の方から声が掛かった。
「シモンズ監督官。」
ネリンが、声の方向に目を向ける。するとそこにはエリック・サリヴァンが立っていた。
「ああ、エリック君。」
親しげに手を振るネリン。レイオットも一度ヒラヒラと手を振って挨拶をする。
エリックは、三人が座る席へと向かい、三人の下へくるとレイオットに声をかけた。
「こんにちは、スタインバーグさん、カペルテータさん。」
「ん、ああ。その後どうだ?」
律儀に挨拶をするカペルとは対照的に、適当に返すレイオット。
その後…それは何をさすのか。やはりファネットの事を言っているのだろう。
一瞬エリックの目が伏目がちになったが、再びレイオットへと視線を戻す。
「ええ、僕は大丈夫です。ありがとうございます、ご心配頂いて。」
「いや、まあ、大丈夫ならいいんだ。よかった。」
非常に素っ気無く言い放つレイオット。でも、なんとなくエリックは、レイオットの優しさが分かってきたような気がする。
「エリック君、どうしてここに…って、確か今日は。」
ネリンが、慌てた様子で話し掛ける。
「はい、勉強を教えてもらう約束のはずだったんですが…忙しそうなので、またにします。」
どうやら、今日はネリンがエリックに、勉強のわからない所を教える、勉強会の予定だったようだ。しかし、昼間の事件によりそのことをすっかり忘れていた。
「え、でも確か試験は明後日よね?」
「はい。」
試験とは、どうやら学校のテストのようだ。
「じゃあ、ダメよ。自分ではわからないから聞きにくるのでしょ。ちゃんとしなきゃ。」
とそこまで言ってみるものの、これから今日の書類作成に、レイオットとも事後処理の打ち合わせをしなきゃならない。
さて、どうしたものか。
「うーんでも、どうしよう。これから、スタインバーグさんと打ち合わせして書類を作成しなきゃならないんだけど…」
顎に手をかけて思案するネリン。
「でも、やっぱりお仕事の邪魔はできませんし、何とか自力で頑張ってみます。」
エリックは、笑顔でそういってくれるものの、ネリンの気分は晴れない。
責任感の強い彼女は、自分のせいでエリックに我慢させるのは嫌だった。
「ううん。やっぱりそれじゃ悪いわ。じゃあ、今から超特急でやってしまうから、エリック君、私の部屋で待っててくれない?」
驚くほど無防備なネリンの言葉、幼いといってもエリックも年頃の男性である。
普通はそれなりに意識するはずなのだが。
さすがのエリックもどうしたらいいか分からないという顔をしていた。年下のエリックを男としてみずに、弟のような目で見ているからか、それとも誘っているのか…ネリンの場合、80%は前者になるだろう。
しかし、エリックの戸惑いは、我関せずに、ネリンはエリックに部屋の鍵を突き出した。
「これ、部屋の鍵だから、勝手に入って待っててくれていいからね。私は、仕事を早めに切り上げて帰るようにするから。」
笑顔で言ってのけるネリン。
そんなネリンの笑顔に何故か、イライラするレイオット。
もちろん顔には全く出さないが。しかし、この気持は抑えられない。
これは何に対する感情なのか。自分以外の人間に笑顔を向けているネリンに対してか。
それともネリンの部屋に入れるエリックに対してか。それがわからないまま、レイオットは行動に移した。
エリックの前に差し出されたネリンの家の鍵。それをレイオットは、ネリンの手からそれを取ると、こう言った。
「シモンズ監督官。仕事が終わらなかったら、未成年を夜中まで一人にしておくことになるぞ。
しかも、栄養の偏ったインスタントフードを食べさせる事になるし、大事な試験前だってのに、シモンズ嬢の料理は食べさせられないからな。」
ネリンの料理。一度だけスタインバーグ邸にて、レイオットが料理を教えた事があるが、その悲惨なこと…だいたい何でもできるネリンが、どうして料理に苦手意識をもっているのか良くわかった出来事であった。
「し、失礼な!人の料理を毒みたいな言い方しないでください。でも、それは確かにそうですね…」
とりあえず怒ってみるも、やはりレイオットの言葉は間違っていない。
エリックは未成年だから、あまり遅くまで家を開けさせるわけにはいかない。
再び思案顔になるネリン。それを見かねたようにレイオットが口を開く。
「じゃあ、俺の家でやったらどうだ?夕食はでるし、エリックにわからない所を教えつつ、俺と打ち合わせをすれば、一石二鳥ってやつじゃないか?エリックだって、つきっきりじゃないと勉強できないわけじゃないだろう?エリックが自分で問題を解いている間に、仕事をすればいい。俺でも教えられる所があるかもしれないしな。」
珍しいレイオットの親切な言葉。普段なら面倒くさいの一言で片付けそうだが。
なんてことはない、とにかくエリックをネリンの家に行かせることを、何とか食い止めたいという気持一つの言葉であった。
「でも、それじゃスタインバーグさんに迷惑が…」
「どうせ、遅くなってここが閉まれば俺の家で打ち合わせする予定だったんだし、料理の量が一人分増えたって大して変わらないしな。」
料理の量が一人分。つまり、今日レイオットは、初めからネリンの分を計算にいれて料理するつもりだったらしい。
まあ、来るたびといって良いほど夕食を食べて帰るネリンなので、そう考えるのは当然なのかもしれない。
ネリンは、しばらくうなりながら考えていた。
「エリック君はどうしたい?」
突然話を振られたエリックは、驚いて目をパチクリさせる。
「え?あ、俺は別にどっちでも…」
エリックの返答に、再び考え込むネリン。どっちを選ぶほうが、エリックにとっていいのか。
それは明確に浮き出ていた。
「エリック君。スタインバーグさんのお宅で勉強することになってもいいかな?」
上目遣いにエリックに問い掛けるネリン。なんとも幼い仕草にエリックは少々胸を高鳴らせてしまう。
まあ、ネリンはそんな意図があってしたのではないだろうが。
「あ、はい。俺は別にいいですよ。」
エリックの返答に、ネリンは一度頷くとレイオットを振り返った。
「じゃあ、お言葉に甘えてもいいですか?スタインバーグさん。」
申し訳なさそうに恐縮しながら言うネリン。
「ああ、俺はかまわないさ。」
「ありがとうございます。」
微笑し礼を言うネリン。
その言葉に、レイオットは自らの野望(?)が達成され、密かにガッツポーズをとっていたのだった。
しかし、密かにガッツポーズをとるレイオットの姿を、エリックが見つめている事には気づいていなかった。
夕食が終わってから、ネリンとの打ち合わせは思ったよりすぐに終わった。
これもエリックの理解力がよく、ネリンが何回も教える必要がないからであろう。
エリックが、問題集をしている間、二人で打ち合わせをし、エリックが分からなくなったら、ネリンがそれを教えるという同時進行の形で進めていったからである。
しかし、なぜかレイオットは自室には戻らず、勉強会が行われている居間に留まっていた。ソファに体を預けながら、雑誌をめくる。カペルテータはカタカタとタイプライターをうち、書類作りに貢献していた。
「ごめんね、カペちゃん。こんな事まで手伝わせてしまって。」
ネリンが、書類の下書きを書き、それをカペルテータがタイプライターで清書していた。
なんせ、締め切りは明日のため、意地を張って自力でするのは諦めたようだ。
「いえ、別に苦ではありません。」
一度タイプライターから、顔をネリンにむけて相変わらずの無表情でいうカペル。
「本当にごめんね。それに助かります。」
しょんぼりとうなだれるネリン。今日は人の助けをもらってばかりだ。
生真面目ゆえに、あまり人の助けを受けようとしないネリンなので、自己嫌悪に陥ってしまう。
「カペル。そろそろ休憩したらどうだ?さっきから長い間、根を詰めているだろう。」
「でも…」
レイオットの言葉に振向いたカペルテータは、思わずネリンの方を見てしまう。
それに気づいたネリン。
「うん、休憩してくれていいよ、カペちゃん。後は、私がやるから。ありがとう。」
笑顔でカペルに言う。そんなネリンにも、レイオットは声をかけた。
「カペルだけじゃなく、あんた達も休憩したらどうだ?」
その言葉にエリックと、ネリンが顔を見合わせる。
「いえ、俺は大丈夫です。」
「ええ、私も大丈夫ですよ。」
そういわれては、無理に休憩を促す事はできない。
とりあえず、レイオットはカペルに座るように促した。
それを見届けるように見ていたネリンと、エリックは再び自らの作業に戻った。
「あの、シモンズさん。ここを教えていただきたいのですが…」
問題集の一点を指しながらエリックがネリンに話し掛ける。
「ん?ああ、はいはい。えーっとね、これは…」
丁寧に教えていくネリン。それをエリックは真剣に聞いていた。
「仲いいですね。」
レイオットの隣に座り、ポツリとカペルがこぼした一言。
「ん。ああ、そうだな。」
カペルと同じように眺めながら、レイオットが相づちを打つ。
「シモンズ監督官。」
思い出したかのようにカペルが、突然ネリンに声をかけた。
「はい?どうしたのカペちゃん。」
「シモンズ監督官は、年上の男性と年下の男性どちらが好みですか?」
「は?」
あっけに取られる他一同。あまりにも突然の質問。意味がわからないし、それを聞いてどうするのかもわからない。
何より、カペルの口からそのような言葉がでるとは思っていなかったネリンは、思わず黙ってしまう。
「えーカペル。それを聞いてどうするんだ?」
「いえ、別に少し気になっただけです。」
全員の頭の上に、さぞかし?マークがたくさん飛んでいただろう。
「いや、まあ。私は別に気にした事は無いけど…」
力なく答えるネリン。それでもきちんと答えるところがネリンらしい。
「それはつまり、年上年下気にしないという事ですか?」
「そうなるわね。」
やっぱり戸惑いがちに答えるネリン。
「そうですか。」
カペルは、そのまま黙り込んでしまった。
そのため、全員の頭の上の?マークが増えたのは、いうまでもない。
時計は、すでにPM10時を指そうとしていた。
未成年がいるので、本日は解散という事になったのだが、どうやらエリックは目的を達成できたようだ。
玄関先で、二人を見送るレイオットと、カペル。
といっても、ネリンはエリックを送るために、管理局の車できていた。そのため、今は車を車庫から出しにいっている。
もうすぐしたら帰ってくるだろう。
「あの、今日は夕食までご馳走になってすみませんでした。」
エリックは、レイオットと向き合い、そう言った。
「いや、礼を言われるような事はしていないよ。礼を言うならシモンズ監督官にいうんだな。」
「はい。わかってます。シモンズ監督官にはいつもお世話になっていて、感謝しています。」
微笑みながらエリックが言った。
「彼女はお節介だからな。」
肩をすくめるレイオット。
そこで、一度会話が途切れた。すると、何か意を決したようにエリックが再び口を開く。
「スタインバーグさん。」
「なんだ?」
不思議そうにレイオットが返す。
「シモンズさんのこと、女性としてどう思っていますか?」
核心をつかれたような気がした。思わず一瞬言いよどむレイオット。
「ま、まあ、そのなんだ。えー生真面目で、気が強い女かな?」
「本当にそれだけですか?」
真剣な眼差しで聞いてくるエリック。その真剣な瞳に、話しをはぐらかそうとしていたレイオットに、罪悪感が降り注ぐ。
真剣な眼差し、それにはやはりそれなりの誠意をもって答えなくてはいけない。
そう思わずにはいられなかった。
「正直言うと、俺にもわからないよ。彼女をどう思っているかなんて。
ただ、わかっている事は、シモンズ監督官と出会って、自分がいかに中途半端だったか思い知らされたってことかな。
常に前向きなシモンズ監督官から与えられたものは多いよ、色んな意味でな。
だから俺も彼女には感謝してる。それに彼女は表情が豊かだから、見ていて飽きないしな。」
自分とは正反対の性格のネリン。表情豊かで前向きで。
こんな風に彼女の事を話すことはなかったが、話してみて彼女の影響力を確認したような気がする。
「って、これじゃ答えにはならないか。」
自分で喋っていて、何か見当違いな事を話している気分になったレイオットは、自嘲気味に肩をすくめた。
「いえ、大丈夫です。…分かりました。」
一体何がわかったのか。そう問い返そうかとも思ったが、それは無粋な気がしてレイオットは自粛した。
エリックは先程からレイオットの話しを真剣に聞き、レイオットから目を離す事は無かった。
そこから、この感情に敏感な少年が何を読み取ったのかは予想もできない。
門前まで車を回してきたネリンが、そんな2人に割り込むようにエリックを呼んだ。
エリックは一度、ネリンの方を振り返り、そして再びレイオットに向き直った。
「俺は、シモンズさんはホントに素敵な人だと思います。
責任感が強くて、真面目で積極的で。それでいて時折幼い表情を見せる。」
「ああ。」
本当に心からそう思っているのだろう。エリックの言葉には重みがあった。
だから、レイオットも相づちをうつことしかできない。
「スタインバーグさんのお気持は良くわかりました。
俺、これからは自分の気持に正直になってシモンズさんと接していきたいと思っています。」
それはつまり、エリックがネリンに恋心を抱いているという風にとっていいのだろうか。
どういう反応を取っていいか分からないレイオットを、半ばというか完全に無視状態でエリックは言葉を続ける。
「必ずシモンズさんを振向かせてみせます。だからスタインバーグさんも、油断しないで下さいね。
じゃないと張り合いがないですから。
今日、シモンズさん家へ行く俺を引きとめたように、戦ってくれないとすぐに出し抜きますからね。」
「え~エリック?」
「俺、絶対スタインバーグさんには負けませんから。」
そう不敵な笑みを浮かべるエリック。
「それでは、失礼します。」
一方的に話し終えると、ネリンの待つ車へと去っていった。
いきなりの宣言に思わず呆然とするレイオット。当たり前だろう。
一方的にエリックにライバルと判断され、いきなりライバル宣言をされてしまったのだから。
「レイオット。今の挑戦はうけるのですか?」
そのカペルの言葉により、やっと正気に戻る。
「いや、まあ。」
苦笑いを浮かべるレイオット。
「シモンズ監督官は気にしないといっていましたが、統計によると、女性は年上の男性の方が好きなようですよ。」
「何が言いたいカペル?」
「シモンズ監督官をめぐっての争いなら、レイオットに分があるのではないでしょうか。」
「そういうもんでもないだろう。」
そう嘆息しながら、カペルらしくないこの知識は、またどこかの雑誌の情報からだな、
なんて考えるレイオット。様々な雑誌を読んで知識を得るのはいいが、カペルの場合、感情がついていっていないので、こういう色恋沙汰の話しをされるとどうも違和感が付きまとう。
まあ、これで少しでも感情をもてるのならいいのだが。
「では受けないのですか?」
そう言われて戸惑う。今日、二人の会話を聞いて、ネリンの部屋にエリックが入るっていうのは嫌だった。
これは隠しようの無い事実で。それを阻止する事に成功はしたが、仲睦ましく寄り添って勉強を教えあっている2人を見て、嫉妬めいた感情を抱いたのも事実だ。
だから二人きりにする事ができなくて、用も無いのに居間に留まった。
だが、だからと言って、ネリンを愛しているかと言われたら何か違うような気がする。
そんな風に思案顔のまま固まっていたレイオットにネリンの声が届いた。
「スタインバーグさん、今日はありがとうございました!おやすみなさい。」
律儀に挨拶をするネリン。エリックとネリンを乗せた車がゆっくりと動き出す。
レイオットは軽く手を振ってネリンの言葉に答えると、再び考え出す。
自分の気持がよく分からない。でもわかっている事、それはまだ自分にはネリンが必要だという事。
それがどんな意味での必要なのかはわからないが。
「ま、受けるとするか。」
エリックの挑戦を。
「しかし、強力なライバルの出現だな。」
年上だからこそできる事もあるが、年下だからこそできることの方が、レイオットには脅威のように感じる。これがまだ、自分と同じ年代の男なら焦りはないだろうが、エリックにはレイオットには無い、若いがゆえの素直さがある。
直球勝負とでもいおうか。本当に油断なんかしてられないなと思いながら、小さくなっていく車を眺めていた。
想いが、また新たな第一歩を踏み出した瞬間だった…
by ミサモンタ様より
~~~~~ 懺悔 ~~~~~~
えーエリックファンのかた、カペルファンのかた、どうもすみません!
特にエリックなんてキャラ変わってます(汗)そして、カペル出番少なすぎ…
ええ、もう本当にいたらないところばかりで申し訳ないです。
そして、萌え要素なんぞほとんど皆無。だからこの場を借りてごめんなさいー。
そして、niaさん。こんな私の小説を載せていただいて、いつもありがとうございます。
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何をおっしゃいますやら!!
私の方こそいつもありがとうございますvv ネリンのちょっとしたしぐさが可愛いですね~vv
ネリンって眼鏡だし真面目そうなんだけど、そのくせ童顔だったりするからしょんぼりしたり、無邪気に笑ったりと時々メチャ可愛いッって感じなのですよ~。
ミサモンタさんの描写からそういうとこが想像できて・・・ふふふふふ。エリックくんたら見る眼あるなぁ。
そんなネリンをめぐる三角関係~しかも年下の男の子@@ 萌える!!
そう! 年下だからこそ手強いのですよ~しかもネリンは鈍いし!
直球ストレートなエリックくんの方に分がありそうですよね~。がんばれレイオット!!
by 管理人
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