[ホイッスル!] 水ユキ
あっけらかんと別れるには名残惜しすぎるけど、またねと約束できるほど確かなものは何もない。
でも追いかけるものは同じだからきっとどこかで。
「・・・じゃあ」
「うん」
ぼん、と軽くはずみをつけるみたいに、頭に掌が置かれて。
最後の部室を出て行く彼の背中は、多分それでふっきれたつもりでいる。
一瞬だけ、薄暗い部屋に射し込んだ光は、無情な音とともにまた閉ざされた。
夢よりも不確かな何かを諦めなさいと諭すように。
一瞬だけ、くっきりと輪郭を映した影ももう見えない。
頭を上げて、眼をそらした。
「・・・負けないんだから」
これからだってそう、多分、こんな思いはいくらも抱える。
見えないゴールの行方を探して、探して。
走り続けるその道に、彼の姿がもう存在しなくても。
負けるものかと言い聞かせて、進み続けるしかないのだ。
こんなハンデを嘆いている場合じゃない。
それでもきっと。
掌一つ分、自分の重荷を彼女に背負わせたずるい男のことは絶対に忘れない。
迷いのない未来図を手にして光の中を歩いていく彼が、いつか自分と同じこの痛みをどこかで抱えてくれればいい。
それが彼女のためでなくても。
さようならと深く、心に刻んだその日。
未来図のかわりに、ボタンが一つ。