[封神演義//妲己×聞仲]
「結局、どっちが勝ったことになるのかしらね」
つぶやいた言葉は相手に聞かせるためではなかったし、多分解答なんて求めてはいない。
どっち、が誰と誰のことなのか、そもそも目の前の男に分かるはずもないと思っていた。
だから、律儀に答えを返してきた時には少し驚いた。
「そうですね。この場合、彼の勝ち逃げ、ということになるのでは?」
道化のような顔はいつも笑っていて、この判定だって抗議がくれば覆すその程度の気安め。
「・・・そういうことに、なる?」
敢えてそういう言い方で、判定の理由を聞いてみる。
「死んでしまった以上、それ以上の勝負はできませんからね」
「現時点では、彼が優位だったということ?」
「だって、貴方、まだ勝負を挑んですらいなかったでしょう」
そして、彼女は一度彼に負けて、この国を追われた身なのだから。
再戦果たせず、ということになれば、結果としては彼の勝ち逃げでいいのではないか。
そういうことらしい。
「それはそうだけど―――でも随分がんばったのよ、妾だって」
「何をです?」
「だから、いろいろよ。超公明を呼んで手助けさせてあげたし、手料理だって作ってあげたし、王サマを誘惑して強くしてあげたし」
「子供じみた独占欲で、彼からいろいろと取り上げたし?」
「まあそうね。でもそれくらいしないと妾のことすぐ放り出しちゃうんだもの」
「まるで恋でもしていたような言い方ですねぇ」
「・・・そういうことに、なっちゃうのかしら?」
「自覚がなかったんですか貴方」
珍しく驚いた顔で、申公豹が呆れたような声を出した。
「だから、どっちが勝ったのかっていうことなのよん」
ため息とともに吐き出された一言が、彼女なりの真剣さを伝えていた。
「勝ち逃げなんて、そんなのずるいじゃないのん・・・」
自分ばっかり、こんなにつらいなんて。
ほんとならこれから形勢逆転、のはずだったのにと彼女は遠い空を仰いだ。
