望みはいつだって叶わない。
だから望みは何かと言われれば、ミランダはそう悩むことなく口にできた。
それを叶える努力はむろんのこといつもの如くやってみるのだが、世間一般の人間が努力によってなんとかする範囲のことが、ミランダには酷く難しい。
だから最後の日に何がしたいかと言われれば、それはもうたやすく答えが出せてしまう。
叶わないことを知っているから。
( 貴方と、最後まで )
いっしょにいられたらいい。
そう願うことは、願うだけのことだったらいくらでも。
でももしも本当に世界が終わってしまうような日が来るとしたら、それは多分自分たちが敗れ、イノセンスを失い、彼女の中から生きるためのすべての力が失われた後のことだろうから、世界が終わる日、ミランダがその場に居合わせることはない。
だからミランダにとっての世界の終わる日は、世界の終わる日の前の、その日だ。
つまり今日。
明日世界が終わるとして、今日のこの日、ミランダはティキの前にいる。
こんな風に望みが叶うならいい。
「例えば大きな洪水が起こって」
みんな溺れて死ぬとしても、ミランダはその中には多分いない。
いたとしても魂はどこかに召し上げられ、死体ばかりが嵐の海原に浮かんでいるだけだろう。
そんな風にして審判を免れる者もいる。
彼はどうだろう。
ミランダが最後の日の前に姿を消した後で、一人で最後の日を迎えるのだろうか。
「多分それは叶えてあげられると思うよ」
ティキは自分の言葉は嘘ばかりだと言うけれど、最後の日に彼を裏切るのは結局自分だ。
だから彼の言葉は嘘にはならない。
( ただ叶わないだけ。 )
望みはなに、と聞かれればすぐ口にすることはできた。
舌先に乗せた希望は嘘よりも手酷く、いつもミランダを傷つけていく。